2022-11

番外編《雨月》

こぼれ雨③ -side風太-

「あれ? 風ちゃん」 お守りを買って戻る途中で、名前を呼ばれ立ち止まる。 すれ違いざま親し気に風太の名を呼んだ声の持ち主に顔を向けながら、胸の内で真っ先に考えたのは、「珠恵がここにいなくてよかった」と、そんなことだった。 風ちゃん――と、風...
番外編《雨月》

こぼれ雨②

風太は、艶やかな着物姿の綺麗な女性二人と、立ち止まり言葉を交わしていた。身体の向きから言っても、呼び止めたのは恐らく、彼女らの方なのだろう。 手前の女性の袖ぐりから覗く細くて白い腕が、珠恵の目に眩しく映る。男なら誰もが勘違いしそうな笑みを浮...
番外編《雨月》

こぼれ雨 ➀

(こぼれ雨:ぱらぱらとこぼれ落ちるように降ってすぐにやんでしまう雨) * * *  目の前の賽銭箱に小銭をそっと落とすと、どこか重厚な音が響く。多くの参拝客が次々と賽銭を投げ込むリズミカルな音を聞きながら、珠恵は、続けて二度ほど頭を下げ、柏...
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⭐️星の子どもの見し夢は

☆ファンアートとして頂いたイラストをご本人の許可を得て公開しています。☆作品の内容に触れるものも多く含まれますので、ご注意下さい。☆画像上でクリック(タップ)して大きなイラストやスライドなどでお楽しみ下さい。 PC・スマホ・タブレットなど※...
番外編《Feb》

月の雫

「咲ちゃんに渡したい物があるんだ」 病室を訪れた咲は、見舞いに来ていた功を目に留めると、輝くような笑みを浮かべすぐにそばに走り寄り、学校や園での話を夢中で話して聞かせていた。 芙美夏が目を覚ましたあの日以来、咲と功が顔を合わせるのは今日でま...