2022-09

本編《Feb》

第四章 居待月15

『もしもし、みい』「淳ちゃん?」 功が部屋に泊まってから10日程経った頃、勤務前に淳也から電話の着信が入った。『元気か』「うん、淳ちゃんも」『ああ、まあ……』「どうかしたの?」『いや、ちょっと』 淳也は、何かを言いあぐねている様子だった。「...
本編《Feb》

第四章 居待月14

廊下に出た芙美夏は、詰めていた息をそっと吐き出して、足早に大竹の姿を探して回った。 途中ですれ違った職員に尋ねて、ちょうど、食堂で朝食の支度をしている大竹を見つけた。「大竹先生」 部屋の入口から声を掛けると、数人の子ども達が、芙美夏と大竹を...
本編《Feb》

第四章 居待月13

唇が離れた瞬間、また功と離れ離れになるのだと胸が軋んだ。もう会えないわけじゃないと、わかっているのに。 口を引き結び、泣きそうになるのを堪えて、顔を上げ笑顔を見せる。「気をつけて、帰ってね」「ああ。芙美夏も仕事頑張って。咲ちゃんが、何ともな...
本編《Feb》

第四章 居待月12

目を覚まして時計を見ると、まだ朝方5時少し前だった。いつもより少しだけ早い時間だが、夕べは本当に久しぶりによく眠ったので頭がすっきりしている。 芙美夏を待ちながら、彼女の存在を感じる部屋で一人で過す間、功は、何かが剥がれ落ちるような感覚で、...
本編《Feb》

第四章 居待月11

呟くような声でそう口にした功の唇が、芙美夏の唇を掠めて動く。功のシャツの袖をぎゅっと握り締め、芙美夏はそっと目を閉じた。 待ち望んだものを与えるように、ようやく唇が重なる。何度も啄ばむように小さなキスを重ねてから、芙美夏の腕が肩に回されると...