2022-05

本編《Feb》

第二章 上弦の月5

一度マンションの部屋へと戻りスーツに着替えた功と淳也は、本社ビルに向かい地下の駐車場に車を停めた。 昨夜とは違い、本社ビルへの訪問は日中だった。 ――12時45分から13時15分 それが二条家の当主であり、二条ホールディングスの最高責任者で...
本編《Feb》

第二章 上弦の月4

香川の元からマンションに戻るとすぐに、功の指示で田邊病院についてより詳細な調査が行われた。 功達だけでなく香川の方でも、病院や田邊、そして美月の母――矢萩望について調査を続行すると言われていた。 帰ってきた二人にいきなり呼ばれ、最低限の情報...
本編《Feb》

第二章 上弦の月3

功が運転をしながら次々とこれからのことを指示していく。頭の中でそれを系統立てて整理するうち、淳也はこれから功がいったいどう動くつもりなのか、自分がやるべきことは何かを理解した。 そうしながら、淳也は今日の昼間の美月の様子を思い出していた――...
本編《Feb》

第二章 上弦の月2

「最低だ……そいつら、みんな狂ってる」 強く握り締めた淳也の手は、怒りを表すように震えていた。まだどこか信じたくないとでもいうように、泣きそうな顔で父親を見つめている。「そういう人間もいるっていうことだ」 功は、そう静かに呟いた。 息子から...
本編《Feb》

第二章 上弦の月1

「どうぞ」 ノックの音に応じるその声を聞いてから、扉を開けて部屋に入る。 二条ホールディングス本社の役員室の一つ、そこが今夜香川から指定された場所だった。 功は淳也を伴い、約束の時間である夜10時の少し前にその部屋を訪れていた。 示されたソ...