2022-04

本編《Feb》

第一章 朧月

初七日が終わるまでは、功だけでなく美月、淳也も学園を休んでいた。 この間、当主である永と香川夫妻が話し合った末、美月は今まで通り屋敷の中の部屋を使い、香川一家が離れから屋敷内へと移ってくる事となったらしい。休みの日々を美月は、香川達の支度を...
本編《Feb》

第一章 新月9

時折苦しそうに眉根を寄せながら、ぐったりとしている美月を、功は抱き上げたまま彼女の部屋に運んだ。 綺麗に整えられたまるで客室のような部屋。その部屋のベッドに美月を横たえると、眩しくない程度に明かりを絞る。 ベッドに戻り上から毛布をかけようと...
本編《Feb》

第一章 新月8

青ざめた表情を暫く功に顔を向けていた美月は、慌てて棺に向き直り、白い布に包まれたものを、膨らんだポケットから取り出して棺の中に入れた。そうして、母の顔の辺りに手をやり、屈み込んでから、名残惜しそうにゆっくりと手を離した。 何か言葉を掛けてい...
本編《雨月》

プロローグ 雨間(あまあい)

――雨 足を止めて、大きなガラス窓越しに、コンクリートを敷いた地面に点々と広がっていく水玉模様を見つめる。僅かの間にそれは、色を変え、ただの濡れたコンクリートの中に埋没してしまう。 溜息を零しそうになった息を吸い込んで空を見上げると、午前中...
本編《Feb》

第一章 新月7

ここ二年、できるだけ顔を合わせないようにと、美月は母の部屋から最も遠い、本館でも離れに近い場所で生活していた。 食事は功と同じダイニングで取るが時間をずらしているため、殆ど一緒になることはなく、朝も通学は別だったため、ここまで間近な距離でま...