番外編《雨月》 こぼれ雨② 風太は、艶やかな着物姿の綺麗な女性二人と、立ち止まり言葉を交わしていた。身体の向きから言っても、呼び止めたのは恐らく、彼女らの方なのだろう。 手前の女性の袖ぐりから覗く細くて白い腕が、珠恵の目に眩しく映る。男なら誰もが勘違いしそうな笑みを浮... 2022.11.14 番外編《雨月》
番外編《雨月》 こぼれ雨 ➀ (こぼれ雨:ぱらぱらとこぼれ落ちるように降ってすぐにやんでしまう雨)* * * 目の前の賽銭箱に小銭をそっと落とすと、どこか重厚な音が響く。多くの参拝客が次々と賽銭を投げ込むリズミカルな音を聞きながら、珠恵は、続けて二度ほど頭を下げ、柏手... 2022.11.14 番外編《雨月》
番外編《雨月》 外待雨-ほまちあめ- 夜食の準備のために台所に立ちながら、そろそろ二人が帰って来るころだろうかと考えていると、玄関の戸が開く音に続いて「ただいまぁ」という翔平の声が聞こえた。 喜世子はなぜだか扉が開く前に気配を感じ取ることが出来るようだが、珠恵はまだそこまでには... 2022.10.20 番外編《雨月》
番外編《雨月》 雨花(うくわ)4 なかなか戻って来ない風太が気に掛かり、珠恵は、愛華や竜彦たちと話している真那に断わりを入れ、席を立った。 何人かの職人連中とも顔見知りになっている真那は、ほろ酔い加減でもうすっかりこの場に馴染んでいる。昌也は、年下の翔平と愛華と話をしている... 2022.10.06 番外編《雨月》
番外編《雨月》 雨花(うくわ)3 去年と同じ花見会場の公園に到着すると、もう大勢の人で賑わっていた。 公園の入口まで迎えに出てきた風太や竜彦たちが、喜世子と珠恵の持って来た荷物を引き取ると、今度は身軽過ぎて落ち着かなくなる。一番重そうな荷物を持ち後ろをついてくる翔平に、珠恵... 2022.10.06 番外編《雨月》