rainmon

本編《雨月》

第十六章 雨とオムライス2

たった数日離れていただけのはずなのに、とても久しぶりに感じる本の匂いに、胸が一杯になる。 カウンターへ入り電源を落としている電子機器類のスイッチを入れてから、珠恵は時間外に返却された図書が溜まっているブックポストへと足を向けた。いつもより多...
本編《雨月》

第十六章 雨とオムライス1

この家で過ごすようになって4日目。およそ一週間ぶりに出勤する日曜の朝、珠恵は目覚まし時計よりも早くパッチリと目が覚めた。 ――どうせ一緒に寝んのに、何でわざわざ二枚敷くんだ。 揶揄っているのかそうでないのもかわからない風太の問い答えられない...
本編《雨月》

第十五章 雨と飴6

服を脱ぎ捨てた風太の素肌が、目の前に晒される。逞しい身体と、射るような視線をまともに見ていられなくて目を逸らし閉じてしまうと、顎に添えられた手に強引ではない力で呼び戻された。 顔を寄せた風太の唇が、珠恵の顔を押し上げるように何度か角度を変え...
本編《雨月》

第十五章 雨と飴5

こんな時に何を口にしたらいいのかわからず、ただ狼狽えている珠恵の身体に、不意にゾクリとした感覚が走った。パジャマ代わりに着ていた部屋着の下に、いつのまにか潜り込んだ風太の指が少しずつ肌を上へとなぞり始めている。「っふ、うた、さ……あのっ、ま...
本編《雨月》

第十五章 雨と飴4

――可愛くて仕方ねえ 洗面台の前の鏡に、まだ惚けて赤くなった顔が映っている。心臓も収まることなくドキドキし続けていた。「……もう」 思い出すだけで、また込み上げそうになる熱を振り払うように頭を横に振って、珠恵は火照りを冷やすために冷たい水で...