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本編《雨月》

第十八章 雨と背中3

梅雨が明けると、真夏らしい晴天の暑い毎日が続いていたが、天気予報はここ二日程、台風が近付いている影響で強い雨が降るとの予報を知らせていた。 風太達の通う学校が夏休みに入った初日、予報通り、珠恵が朝家を出る頃にはまだ小粒だった雨は、昼過ぎには...
本編《雨月》

第十八章 雨と背中2

「……はらさん? 福原、さん?」 真那に名前を呼ばれて、珠恵は我に返った。喜世子との話を思い浮かべていたことに意識が捉われ、話を聞き洩らしてしまったようだ。「え? あ、ごめんなさい」「やっぱりちょっと、疲れてます?」「あ、ううん違うの、ごめ...
本編《雨月》

第十八章 雨と背中1

騒動の翌日、昼休みに財布を取りにロッカールームへと向かっていた珠恵は、その途中、後ろから凄い勢いで腕を引かれた。危うく声を上げそうになるほど驚いて、振り返る。「ま、真那ちゃん?」「よかったぁ捕まえられて。もう、あんなに待っててって視線送って...
本編《雨月》

第十七章 雨と鞭6

恐らくは超がつくであろう一流ホテル。これまでの人生に無縁だった高級な客室。品のある調度品で整えられたこの部屋は、あの日珠恵と泊まったホテルとは雲泥の差だった。世間的にみれば、差し詰めこの部屋が門倉で、あのラブホテルの部屋は風太なのだろう。 ...
本編《雨月》

第十七章 雨と鞭5

なぜ珠恵がこんな男に頭を下げる必要がある。怒りを含んだ言葉が、喉元までせり上がる。けれど、珠恵の顔を見た風太は、それを辛うじて飲み込んだ。 珠恵の表情は、もう癖になってしまっている謝罪の言葉を口にする時の、どこか卑屈にさえ感じるいつものそれ...