rainmon

本編《雨月》

第一章 雨と図書館2

時折見掛けるようになったその人とは、顔を合わせれば会釈する程度には顔見知りになった。やがてその人が図書館を利用する日に、ある法則を見つけたのは後輩の真那だった。「ね、気付いてました? 森川さんって、だいたい雨の日にここ利用してるって」 その...
本編《雨月》

第一章 雨と図書館1

明け方から激しく降り続いた雨は、正午を回った頃に、ようやく少し雨脚を弱めていた。 今年は、冬が間近の最近まで頻繁に秋台風が発生するなど、天気が安定せず大気が不安定だという言葉を、しばしば天気予報で耳にする。 カウンターで提示された貸出禁止図...
本編《雨月》

プロローグ 雨間(あまあい)

――雨 足を止めて、大きなガラス窓越しに、コンクリートを敷いた地面に点々と広がっていく水玉模様を見つめる。僅かの間にそれは、色を変え、ただの濡れたコンクリートの中に埋没してしまう。 溜息を零しそうになった息を吸い込んで空を見上げると、午前中...