rainmon

本編《雨月》

第九章 雨乞い1

朝から休みのその日は、また夕方から夜にかけて雨が降る模様だった。洗濯や掃除などの家事を手伝ってから、読みかけていた本を開いて。けれど殆ど文字を追うこともできないまま、支度を始めなければならない時間を迎える。 門倉との約束は夜の七時。都心にあ...
本編《雨月》

第八章 雨間(あまあい)2

食事を終えた後、これからまた仕事に戻ると言った門倉とは銀座の駅で別れた。次に会うのは、図書館の休館日に当たる月曜日を指定された。「私は職務がありますので、今日と同じような時間になります。ご両親にも、少しだけ遅くなると言っておいて下さい。それ...
本編《雨月》

第八章 雨間(あまあい)1

待ち合わせは、銀座にある老舗デパートの時計台下。 比較的邪魔になりにくい場所を見つけてそこに立ち、珠恵は色とりどりの傘を差した人々が行き交い、また立ち止まるのをボンヤリと見つめていた。 雨に呼ばれ浮かぶ面影に、胸が苦しくなり目を閉じる。羽織...
本編《雨月》

第八章 雨間(プロローグ)

「お疲れー」「お疲れ様です」 すれ違う職員やパートの従業員に挨拶をしながら、職員用の出口へと向かう。 扉を開けて外へ出た珠恵は、昼からずっと降り続く雨に、手にしていた傘を広げて、天気のせいだけでなく薄暗くなり始めた公園へと視線を移した。 雨...
本編《雨月》

第七章 雨と混沌7

どうやってまともに運転をして家まで戻って来たのか、その辺りの記憶は曖昧だった。 風太の車が戻った気配を察した面々が、母家から外に出て来る。真っ先に駆け寄ってきた喜世子が、風太が運転席から降りるのを待ち構えていた。「風太、珠ちゃんは」「……家...