rainmon

本編《雨月》

第十章 雨と雷鳴3

電話で珠恵に連絡を取り、風呂から出ているのを確かめてからホテルへと戻った。 念のためドアをノックしてから部屋に入ると、風太が出て行った時より血色が戻った顔をした珠恵が、バスローブを身につけやはり所在無げに立っていた。 普段からメイクは薄かっ...
本編《雨月》

第十章 雨と雷鳴2

髪や服からも雨が滴る程濡れた珠恵の身体は、すっかり冷え切ってしまっていた。 こんな状態の客をタクシーが乗せてくれるかもわからない。第一こんな雨の夜にすぐにタクシーがつかまるとも思えない。それに、こんな状態の彼女をタクシーに乗せるのも抵抗があ...
本編《雨月》

第十章 雨と雷鳴1

買い出しを済ませた風太と翔平がスーパーの外へ出ると、雨はもう止んでいた。「ほんっと、あの人ら底なしっすよ」 重い酒を抱えながら自分ではそれを飲めない翔平は、さっきからずっとブツブツと文句を言っている。「聞いてないっしょ、風太さん」 愚痴に適...
本編《雨月》

第九章 雨乞い3

ふと、名前を呼ばれた気がして、顔を上げた。 首を廻して外を見ると、いつの間にか降り出した雨が窓を濡らしている。雨がとうとう幻聴まで連れてきたのかと苦笑して、風太は、視線を教壇に立つ教師の方へと引き戻した。 ――傘、持って来てねえな…… 折り...
本編《雨月》

第九章 雨乞い2

言葉は理解できても、問われていることの意味がわからず、咄嗟に言葉が出てこない。「どういう……それは……」 落ち着け、と自分に言い聞かせながら、珠恵は静かに息を呑み込んで、森川の写る二枚の写真から顔を上げた。「その人は……ただ、ちょっとした知...