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本編《雨月》

第十三章 雨と水無月2

目を覚ますと、薄くともされた灯りの中、見知らぬ天井が目に入る。瞬きを繰り返し、ぼんやりとした頭で記憶を辿ろうとして。「――起きたか」 耳に届いたその声に、珠恵は視線を僅かに動かした。 電灯の影になり、あまり表情が見えないその人の手が伸ばされ...
本編《雨月》

第十三章 雨と水無月1

スクーターは翔平という男に預けて、昌也は森川と共に車に乗り込み自宅へと向かった。 昌也が何も言わなくても、迷うことなく車を走らせる様子に、二人が本当に見知った間柄なのだということを実感させられる。 珠恵の様子を聞いたきり、険しい表情のまま口...
本編《雨月》

第十二章 雨隠6

「風太さんっ」 下から聞こえた翔平の呼び声に、風太は、梁と柱を金具でとめる作業をしていた手を止めた。「どうしたっ」「あのっ……えっと」 周りの作業音にかき消されないように大声で問い返すが、翔平の返事ははっきりしない。素早く残るひとつの金具を...
本編《雨月》

第十二章 雨隠5

『福原、昌也君ですよね。突然ごめんなさい。私、お姉さんと図書館で一緒に働いている萱口真那と言います』 昌也に電話を掛けてきた見知らぬ番号の相手は、繫がるやいなやそう名乗ると、すぐに本題――火曜日から姉と連絡がつかないこと、実は姉に好きな男が...
本編《雨月》

第十二章 雨隠4

「――はい、そうですか。それじゃあ、お大事にとお伝え下さい」 通話を終えた真那が、風太を見上げて首を横に振った。「やっぱり、風邪で寝込んでるから当分仕事も休ませるって。電話、本人に繋いでもらえそうな雰囲気じゃなかったです」「そうか」「お見舞...