Februusの月
プロローグ4
たった二日後の放課後の事であった。 いつものように芙美夏は、高学年の子ども達と揃って皆で帰園していた。「すっげえ」 園の正門が見える角に差し掛かると、前を歩いていた男の子達が声を上げ園へと走り始めた。後ろので何だろうね、と顔を見合わせながら...
プロローグ3
芙美夏は、両手をみどり先生と絵美先生に引かれながら、美月、と泣き叫ぶ声に何度も後ろを振り返った。 とてもいい匂いのする身体で、芙美夏を美月と呼び、愛おしそうに抱きしめた女の人は、芙美夏を追いかけようとするのを、一緒に居た男の人に引き戻され抱...
プロローグ2
この場で彼女に現実を受け止めさせることは難しい。しかし、だからといってこの子を連れて帰るわけにはいかない。そもそも、この子は一体どこの子どもだろうか。一人で遊んでいるところをみると、この近所の子どもなのだろう。小学校に上がる前位に見えるが、...
プロローグ1
ずっと、後悔していた。 伸ばされた小さな手を振り払ったあの時の、大きく見開かれた瞳が いつまでも、胸に棘のように刺さっている。 まっすぐな瞳を―― 悲しみを飲み込むその瞳を―― ただ、冷たく見下ろすしか出来なかったことを。 * * * 十年...