本編《Feb》 第五章 寝待月5 迷いをみせるように揺れ動く双眸を、功は、真っ直ぐに見つめ続けた。「……ホントに、私でいい?」 ようやく口を開いた芙美夏のその言葉に、心とは真逆にゆっくりと頷いてみせる。「芙美夏でないと、俺は満たされない」 瞳から零れた涙がスカートに落ちて広... 2022.10.10 本編《Feb》
本編《Feb》 第五章 寝待月4 「何で彼女を知ってる」 貴菜の名を芙美夏が口にすると、それまで黙って話を聞いていた功が、立ち止まり戸惑った表情を見せた。 その問いに、心が過去と今とを彷徨う。 功に自分の気持ちを少しずつ吐露しながら、あの頃の事を思い出すと、まるでつい昨日の... 2022.10.07 本編《Feb》
本編《Feb》 第五章 寝待月3 空港の到着ロビーへ出ると、いつものように控え目に手を振る芙美夏に頷く。 本当は人混みが見えた時から、その中にいる彼女を見つけているが、走り寄って抱き締めてしまいたい気持ちを抑えるように、功はゆっくりと歩を進めた。「久しぶり」 その言葉に、芙... 2022.10.04 本編《Feb》
本編《Feb》 第五章 寝待月2 夜勤を終えてから、芙美夏は退園前に園長室に立ち寄った。「どうぞ」 ノックをして中に入ると、机から顔を上げた園長が芙美夏を見遣る。「香川先生。どうしましたか?」「今、少しだけお時間を頂けますか?」 黙ってソファを示され、頭を下げてそこに腰かけ... 2022.10.04 本編《Feb》
本編《Feb》 第五章 寝待月1 ドイツの会社との業務提携の話が、ここへきて平行線を辿っている。双方の提示した契約の最重要条件が噛み合わずどちらもが引かないため、なかなか折り合いがつかない状態だった。 かなり大きなその取引の中心となっているのは、功を筆頭とした若手の社員で、... 2022.10.04 本編《Feb》