Februus3

本編《Feb》

第三章 満月2

それはもう問いかけでも何でもなかった。「功、さん?」 芙美夏が、戸惑った目で功を見上げる。「康人には女がいる。わかって付き合ってたのか?」「えっ?」 驚いたように目を開く芙美夏を見ながら、功は搾り出すように言葉を漏らした。「――が、幸せじゃ...
本編《Feb》

第三章 満月1

屋敷に帰りついたのは、もう深夜零時近い時間だった。玄関を入ると、和美が起きていて功を出迎えた。「随分と、遅かったんですね」 言いながら、和美は顔を顰めた。「何か、あったんですか」「いや」「そうですか。飲んで、いらっしゃいますね。それにお顔の...
本編《Feb》

第三章 小望月4

結納の日取りが正式に三月と決まった。そしてその日は、芙美夏の卒業式と重なっていた。 結納の日の前夜は必ず屋敷に戻って食事を取り、翌日訪ねて来る仲人を迎えられるよう準備をしておくように――との父からの伝言が、香川を通して功に伝えられていた。 ...
本編《Feb》

第三章 小望月3

その日を最後に、功は、年末年始にさえも屋敷には戻らなかった。 マンションと会社を往復し、香川の下について、二条での仕事を把握していくための毎日を送っていた。 大学は論文を提出さえすれば、後はその評価を待つだけだ。淳也はあと一年残っているため...
本編《Feb》

第三章 小望月2

雨模様の空を見上げる。 ――二年と少し 久しぶりに戻った日本は、生憎の空模様だった。功は、迎えの車で空港から屋敷へと向かっていた。 雨の日には未だに、濡れてボロボロに傷ついていた彼女の姿を思い出す。少しでも油断すると、簡単に入り込んでくる面...