Februus3

本編《Feb》

第三章 満月7(孤月)

美月がその部屋に入るのは、およそ二年ぶりの事だった。 由梨江が生きていて、まだ美月を美月だと思っていた頃は、一年に何度か一緒にここにその人を訪ねる機会があった。 由梨江の前ではその人をパパと呼んだが、自分もその人も、その事に慣れる事は無かっ...
本編《Feb》

第三章 満月6(弧月)

軋む体をゆっくりと起こし、隣で眠る人を起こしてしまわなかったかと、じっと見つめる。少し開いた功の唇からは、静かに繰り返す呼吸の音が聞こえていた。 そっと、その瞼にかかる髪に触れる。そのまま顔に触れようとした手を、直前で止めた。 ベッドを揺ら...
本編《Feb》

第三章 満月5

目覚めた時には、もう部屋の中がすっかり明るくなっていた。うつ伏せになった身体をゆっくりと起こしながら、功は、心地よさと不快さの入り混じった気だるさを感じていた。「……芙美夏?」   部屋を見渡すと、芙美夏の姿はもうそこになかった。 昨夜の事...
本編《Feb》

第三章 満月4

部屋の中に、荒い呼吸が響いていた。 汗で滑り落ちるように脱力した芙美夏の腕が、ゆっくりと離れベッドに落ちていく。背中に付いた傷が汗で少しひりついている。噛まれた肩の傷は、功にも熱を持ったような痛みを残した。 芙美夏の額に張り付いた髪を掻き上...
本編《Feb》

第三章 満月3

薄暗い部屋の中で、白い身体が波打つように揺れる。「んっ……や……」 声を抑える芙美夏を、もっと乱れさせたくなる。肌の稜線を辿るように舌を這わせ、硬くなった胸の先を口に含んで、舌で舐め緩く吸い上げると、腕の中で身体がしなった。 白く柔らかな膨...