Februus3

本編《Feb》

第三章 十六夜9

淳也は栞に視線を向けたが、功は康人から目を逸らさなかった。「何回聞いてみても曖昧にはぐらかすみいちゃんに、そのうち疑いが確信に変わっていきました。最初は、功さんの事もあったから、少し距離を置いてみるのもいいのかもしれないって、そんな程度に思...
本編《Feb》

第三章 十六夜8

マンションに着くと、淳也と、そして栞とが、リビングのソファに腰を下ろし、黙ったまま向かい合っていた。 向けられた栞の表情はひどく堅い。こちらもかなり気まずいが、非は明らかに功にある。まずは昨夜の失礼を、頭を下げて詫びた。「康人がわざと誤解さ...
本編《Feb》

第三章 十六夜7

白紙にしたいとの申し出を羽生家から受けた形で、この話はなかったことになる。 そう話す父、永の疲れた表情を見ながら、そして出て行った芙美夏を思いながら、功は自分の浅はかさは嫌というほど感じていた。「自分がどれほど愚かかは、十分わかっています。...
本編《Feb》

第三章 十六夜6

功は、無駄だとわかっていながらも、淳也に芙美夏の受けた大学を調べ直し、入学の手続きを行っていないかを調べるよう指示した。そうして、功自身は、父が戻るまでの間もう一度芙美夏の部屋に戻った。 芙美夏の携帯に入っているメッセージや電話の履歴を調べ...
本編《Feb》

第三章 十六夜5(孤月)

車止めに止まった迎えの車に、足早に乗り込む。「宜しいですか?」 そう聞かれて、美月は頷いた。「お願いします」 車が学園の門を出て大通りを左折する。車窓越しに、美月は遠ざかるその景色をじっと眺めていた。「それにしても、何も今日のような、卒業式...