Februus2

本編《Feb》

第二章 簿月(過去1)

(美月と淳也) 父が二条家に彼女を連れてきたのは、淳也が小学部四年の秋のことだった。彼女は小学一年生の割には小さな女の子で、どことなく見た目が美月様に似ていた。 細い身体に大きな目、父に手を引かれた彼女は、妻と息子だと父から和美と淳也を紹介...
本編《Feb》

第二章 二日月7

大学の駐車場に車を止めた淳也は、足早に校舎へと向かう途中で、見知った人物を見かけて駆け寄った。「青山先生」 呼ばれて立ち止まった人物は、先生と呼ばれるにはまだ若い、学生のような見た目の准教授だった。「ああ、香川君」「おはようございます。功さ...
本編《Feb》

第二章 二日月6

正巳が美月を連れて行ったのは、生徒会長室だった。先に中へ入るよう美月を促すと、続いて部屋に入り中から鍵を閉める。 美月はそれを見ながら、もう一度、硬い表情で口を開いた。「どういうつもりですか」 何も答えず笑みを浮かべたまま、正巳は革張りの生...
本編《Feb》

第二章 二日月5

翌朝は学校まで淳也が送ってくれるというので、それに甘えて車に乗せて貰った。夕べ殆ど眠れなかったため、助手席で揺られながら自然と目が閉じてしまう。「みい、……みい、電話なってる」 淳也の声に瞼を上げる。鞄の中から唸るようなバイブ音が聞こえてい...
本編《Feb》

第二章 二日月4

――お母さんが訪ねてきた。 本当なのだろうか。  美月は、親が居ながら施設で暮らさざるを得ない境遇の子どもではなかった。生まれてすぐに親に捨てられ、命も危うかったという事だけは、先生達の話から何となく知ってはいた。 だから、記憶のある初めの...