Februus2

本編《Feb》

第二章 三日月6

医師の言ったとおり、あの後美月の熱はかなり上がった。薬を飲んでいるため目覚めはしないが、何度も苦しそうにうなされていた。 功はそばにいて、汗を拭いタオルを変え水分を――時には口移しで飲ませて、明りを最小限に絞った薄闇の中で、汗を酷くかいて湿...
本編《Feb》

第二章 三日月5

翌朝淳也は、金沢藍の家のそばに車を停めていた。夕べは、一睡もできなかった。 恐らくそろそろ藍が通学のために家を出て来る時間だろうと、時計と玄関のドアを見つめていると、高等部の制服を着た女子生徒が門から出てくる。学園の制服を着た彼女が、家の中...
本編《Feb》

第二章 三日月4

医師の到着を知らせる着信に対応し、功は、泣きはらし不安げな顔をした美月に、医者を呼んだことを告げた。 せめて診察と治療を受けて欲しいと、できるだけ落ち着いた口調で説得する。初めは抵抗した美月も、こんな時間に医師が来てくれたことへの申し訳なさ...
本編《Feb》

第二章 三日月3

水音が聞こえ始めたのを確認し、椅子に腰かけると額に手を当て大きく息を吐く。指先がまだ微かに震えていた。 携帯を取り出し、淳也を呼び出す。数度のコール音で電話が繋がった。『はい』「昨日美月から何を聞いた」 のっけから前置きもなく本題に入る功の...
本編《Feb》

第二章 三日月2

部屋の扉を開けると、自動的に明かりが灯る。 許可している箇所だけは家政婦により整えられてるその部屋に、功が戻って来る事は、今では月に一度あるか無いかだった。 腕に抱きかかえていた美月を、革張りのソファの背もたれに凭れ掛からせるように座らせる...