Februus2

本編《Feb》

第二章 上弦の月3

功が運転をしながら次々とこれからのことを指示していく。頭の中でそれを系統立てて整理するうち、淳也はこれから功がいったいどう動くつもりなのか、自分がやるべきことは何かを理解した。 そうしながら、淳也は今日の昼間の美月の様子を思い出していた――...
本編《Feb》

第二章 上弦の月2

「最低だ……そいつら、みんな狂ってる」 強く握り締めた淳也の手は、怒りを表すように震えていた。まだどこか信じたくないとでもいうように、泣きそうな顔で父親を見つめている。「そういう人間もいるっていうことだ」 功は、そう静かに呟いた。 息子から...
本編《Feb》

第二章 上弦の月1

「どうぞ」 ノックの音に応じるその声を聞いてから、扉を開けて部屋に入る。 二条ホールディングス本社の役員室の一つ、そこが今夜香川から指定された場所だった。 功は淳也を伴い、約束の時間である夜10時の少し前にその部屋を訪れていた。 示されたソ...
本編《Feb》

第二章 三日月10

誰かに名前を呼ばれた気がした。 ――芙美夏 と。 目が覚めると部屋の中には、昨夜美月を診察した女性の医師がおり、ベッドサイドで脈を取っていた。「私のことがわかりますか?」 目を開いた事に気が付いた医師が、優しく微笑みながら問うてくる。「はい...
本編《Feb》

第二章 三日月9

その日、田邊と訪れた先で何を知ったのか。 自分が聞かされた話を、美月は壮絶な痛みに堪えるように何度も息を吐きながら、それでも努めて冷静であろうとするかのように、静かに話し終えた。 ただ、言わないと約束したからと、母親の話を誰から聞いたのか、...