Februus2

本編《Feb》

第二章 十三夜4

そう遠くない自宅まで藍を送り届けた淳也は、すぐに功のマンションへと引き返した。 駐車場に車を止めて暫くの間待っていると、下って来たエレベータが開き中から美月が出てくる。 車の外に出て、こちらへと向かい歩いてくる美月を見つめていた視線を、淳也...
本編《Feb》

第二章 十三夜3

事態を飲み込めず茫然としたまま、功の顔から、美月はもう一度写真へと視線を落とした。震える指先で、写真に写るその人の顔の辺りにそっと触れる。人に言われなくても自分でもわかるくらい、その人と美月はよく似ていた。「どう、して……」「あの日、美月が...
本編《Feb》

第二章 十三夜2

藍を車に残してエレベータに乗ると、隣に立つ美月の緊張が伝わってくる。「顔、強張ってるぞ」 それを少しでも解そうと頬を突いて笑い掛けると、何とか淳也に笑い返してみせた美月は、けれどエレベータが最上階について扉が開いても、その場を動こうとしなか...
本編《Feb》

第二章 十三夜1

功と淳也の出発を五日後に控えたその日、衝撃的なニュースが流れた。 それは、逮捕が間近に迫っていると噂されていた田邊病院の副院長田邊尚子が、未成年の息子に刺されたというものだった。幸い命は取り留めたが、重症であるとの報道がなされていた。 息子...
本編《Feb》

第二章 上弦の月9

淳也の顔を見た途端、美月は、さっき康人から聞いた話に顔が強ばるのを感じた。「お前らがほったらかしにしとくから、みいちゃん駐車場で、イカレた馬鹿にナンパされてたぞ」「えっ、みい駐車場なんかにいたのか?」「え、あ……うん」「何であんなとこ」「ス...