本編《Feb》 第一章 新月5 時が止まったみたいに、頭が真っ白になる。美月は無意識のうちに、震える手で淳也の腕にしがみついていた。 携帯電話の着信音が響き、それに呼び覚まされるように我に返る。「――うん、ああ……わかった。うん、今から。うん」 誰かと話す淳也の声を聞きな... 2022.04.21 本編《Feb》
本編《Feb》 第一章 新月4 病室の扉を押し開けると、奥にガラスで仕切られた部屋がある。透明なそれ越しに、大きな木目の美しいベッドに横たわる、生気が感じられない痩せ細った青白い横顔を見つめた。 そこに母の命を繋ぐための数々の装置や伸びている数本の管がなければ、ここが病院... 2022.04.20 本編《Feb》
本編《Feb》 第一章 新月3 病院の入口前に車が止まると、中から出てきたスタッフによって、特別室専用のエレベータへと案内される。一人そこに乗り込み自動的に最上階へと昇ると、今度はフロア専属のスタッフが、絨毯の敷かれた廊下で待ち構えていた。 病院というより、まるでホテルの... 2022.04.19 本編《Feb》
本編《Feb》 第一章 新月2 雨が降るかもしれない。 美月は、窓の外をみながら眉を曇らせた。 雨が降ると、昼休みを過ごすための空き教室を探さなければならない。せめて昼休みの終わりまでは何とかもって欲しい。そう思いながら、ランチボックスと念のために折畳傘を巾着につめて、席... 2022.04.19 本編《Feb》
本編《Feb》 第一章 新月1 《第一章》 美月 中学二生 功 高校三年生 淳也 高校二年生・・・・・・・・・・・・・・・・ 昼休みになると、高等部の生徒会長室の窓から小・中等部校舎の裏庭を見るのが功の習慣になっていた。 雨の日や風が特に強い日を除けば、ほぼ毎日。 コー... 2022.04.19 本編《Feb》