第一章
第一章 朧月
初七日が終わるまでは、功だけでなく美月、淳也も学園を休んでいた。 この間、当主である永と香川夫妻が話し合った末、美月は今まで通り屋敷の中の部屋を使い、香川一家が離れから屋敷内へと移ってくる事となったらしい。休みの日々を美月は、香川達の支度を...
第一章 新月9
時折苦しそうに眉根を寄せながら、ぐったりとしている美月を、功は抱き上げたまま彼女の部屋に運んだ。 綺麗に整えられたまるで客室のような部屋。その部屋のベッドに美月を横たえると、眩しくない程度に明かりを絞る。 ベッドに戻り上から毛布をかけようと...
第一章 新月8
青ざめた表情を暫く功に顔を向けていた美月は、慌てて棺に向き直り、白い布に包まれたものを、膨らんだポケットから取り出して棺の中に入れた。そうして、母の顔の辺りに手をやり、屈み込んでから、名残惜しそうにゆっくりと手を離した。 何か言葉を掛けてい...
第一章 新月7
ここ二年、できるだけ顔を合わせないようにと、美月は母の部屋から最も遠い、本館でも離れに近い場所で生活していた。 食事は功と同じダイニングで取るが時間をずらしているため、殆ど一緒になることはなく、朝も通学は別だったため、ここまで間近な距離でま...
第一章 新月6
葬儀の会場で遺族席に座りながら、功は、ほぼ末席に近い席に腰を下ろした俯き加減の美月を、時折そっと見遣っていた。 昨夜、通夜の席にはじめて美月が顔を見せたのは、もう今日に日付が変わった深夜二時にはなろうという時間だった。 一般の弔問客が引けた...