本編《雨月》

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第二章 雨とバタフライ2

その週末、返却期限が過ぎていたと、問題集を夕方になって返しに来た森川に対応したのは、カウンターに入っていた珠恵だった。 顔を合わせるのは、嘘をついてしまったあの日以来だった。自分の中にある気まずさのせいでぎこちなくなる珠恵とは違い、森川の態...
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第二章 雨とバタフライ1

「なーんか知らない間に、福原さんって、森川さんと仲良くなってません?」 休憩が久しぶりに一緒になった真那が、大きく開いた口にデニッシュを頬張りながら、突然そんなことを言い出した。 森川の名前を聞くだけで小さく跳ねる鼓動を誤魔化すように、珠恵...
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第一章 雨と図書館4

翌日から、珠恵は職場で身につけるエプロンのポケットに、ずっとあるメモを忍ばせていた。 初日は、それを手渡す状況を考えては緊張し、雨の日でもないのに、誰かが入口に現われるたびにそちらを意識してしまい、一向に落ち着かなかった。 ――あの人だから...
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第一章 雨と図書館3

年も明け、季節はもう一月も半ばに差し掛かっていた。 今年の冬は比較的温暖だと言われているが、秋めいた好天の翌日に激しい雷雨が、そして急激な寒波とともに積もるほどの雪が降るなど、気候の変動が激しい。 今日は、いつもより気温は少し高く、朝からず...
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第一章 雨と図書館2

時折見掛けるようになったその人とは、顔を合わせれば会釈する程度には顔見知りになった。やがてその人が図書館を利用する日に、ある法則を見つけたのは後輩の真那だった。「ね、気付いてました? 森川さんって、だいたい雨の日にここ利用してるって」 その...