本編《雨月》

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第十一章 雨と渇求1

「……眠ったのか?」 知らない感覚に翻弄され力が抜けて、しばらくは何も考えられずにぼんやりとしていた珠恵は、身体を拭われながらいつのまにか目を閉じてしまっていた。 そんなつもりではなかったけれど、珠恵を気遣う森川の静かなその声が耳に届いた時...
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第十章 雨と雷鳴6

身体が一瞬強張り、見開いた瞳に涙が膨れ上がる。声も出さず小さく首を振る珠恵の脅えた様子に、それが懸念ではなかったのだとわかる。「指で、か?」「い、やっ」「珠恵」 何かを振り払おうとするかのように首を振り続ける珠恵を、風太は強く抱き締めた。「...
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第十章 雨と雷鳴5

身体の芯がゾクリと震え、心臓を鷲掴みにされた気がした。 腕に触れている華奢な手を乱暴に掴むと、押し倒した身体の顔の横に縫い付けるように押さえ込む。見開かれた瞳を見つめる自分の目は、きっとさっきまでは抑えていた欲望を曝け出してしまっているだろ...
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第十章 雨と雷鳴4

少しでも暗い方が落ち着くだろうと、明かりを少し落とそうとベッドサイドのスイッチを押すと、薄暗くなった部屋の中を光の粒が回り始める。どうやらミラーボールのスイッチを入れてしまったようで、慌ててそれを止めて苦笑いしながら、呟きが風太の口から洩れ...
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第十章 雨と雷鳴3

電話で珠恵に連絡を取り、風呂から出ているのを確かめてからホテルへと戻った。 念のためドアをノックしてから部屋に入ると、風太が出て行った時より血色が戻った顔をした珠恵が、バスローブを身につけやはり所在無げに立っていた。 普段からメイクは薄かっ...