番外編《雨月》 休日閑話:雨と甘露4 早朝、風太は空がまだ白み始めたころに、目を覚ました。 すぐそばで布団にうつ伏せたまま、ピクリともせずに眠っている珠恵の身体には、風太の着ていた男物の浴衣が掛けられている。横になったまましばらくその様子を眺めていた身体を起こし、そっと布の端を... 2022.08.17 番外編《雨月》
番外編《雨月》 休日閑話:雨と甘露3 温めのしっとりと肌を労わるような湯にゆっくり浸かると、心地よさに、思わず声が漏れそうになる。ガラスで仕切られた窓の下が十センチ程開いていて、そこからも、川の流れる音がよく聞こえてきた。 檜で出来た浴槽は、ほどほどの広さがあり、一人で入るには... 2022.08.17 番外編《雨月》
番外編《雨月》 休日閑話:雨と甘露2 「――珠恵」 肩を揺すられ、はっと目を覚ます。車は駐車場らしき場所に止まっていて、顔を上げて周りを見ると、そこはもう、さっきまで走っていたはずの緑の木々で囲まれた山中とは景色が違っていた。 土産物屋や食べ物屋が立ち並ぶ、山間の温泉街のようだ... 2022.08.17 番外編《雨月》
番外編《雨月》 休日閑話:雨と甘露1 つづら折になった山道を下っていくその先に、湖と温泉街が見える。車がその集落へと入っていく大きなカーブに差し掛かったところで、さっきまでは殆ど見当たらなかったはずの車が列をなしているのが見えた。「結構、混んでるんですね」「だな」 スピードを落... 2022.08.17 番外編《雨月》