番外編《雨月》

番外編《雨月》

雨花(うくわ)2

花見の当日、午前中は夕べの雨を引き摺るように花曇りだった天気も、午後からは雲の合間に青空がのぞき、気温も少しずつ上がり始めているようだった。 昼前に場所取りに出向いた翔平から入ったそんな報告も、けれど殆どずっと台所に詰めている喜世子と珠恵に...
番外編《雨月》

雨花(うくわ)1

また、桜が咲く季節が巡ってくる。 春が来るのに合わせたように丸みを帯び始めていた桜の蕾を見上げながら、花見の頃まで、この寒さが続くのではないだろうかと思っていたのは、つい先週のことだというのに。 季節を思い出したかのように急に暖かくなった気...
番外編《雨月》

通り雨 -雨宿り

-おまけ(ターニャのお店)-「ねえねえ」「何よ」「あれ、どうなったのかしら」「あれ?」「ほら、風ちゃんたちの」「ああ……そういやもう、あれから結構経つわよね」「あの後さあ、風ちゃん来た時、笑っちゃったわあ」「すんっごい不機嫌そうなの。顔が」...
番外編《雨月》

通り雨-③雨過

試験が終わるまでの間、風太はずっと隣の部屋で寝起きし、いつも夜遅くまで明かりが灯っていた。そんな状態が続くと、身体の方が心配になってくる。ここのところ仕事も忙しいらしく、休みも少ない。その上、毎晩遅くまで起きているのだ。 だから、テスト期間...
番外編《雨月》

通り雨-②小雨

朝から何度目かの溜息が、無意識に零れてしまっていた。じっとこちらを見ている視線に気がつき、我に返る。「何か、ありました?」「え?」「今日あんまり元気ないし。溜息とかついちゃってアンニュイ? って感じだし」「あ、ごめんなさい」「森川さんとケン...