番外編《雨月》 四温の雨 おまけ 「帰りにちょっと寄れって連絡が来てたから、もう少しいいか」 駅前の通りに差し掛かったところで、風太が指示したのは、ターニャの店の方向だった。 花のお礼も言いたいからと珠恵が頷くのを待って、先程の静けさとは逆の、多くの光であふれた通りへと向か... 2023.05.06 番外編《雨月》
番外編《雨月》 四温の雨 2 風太に手を引かれついて行った先は、レトロな外観の小さな洋食屋だった。 『Lanthan』と書かれたその店は、ターニャの店がある区画とは駅を挟んで逆側の、喧騒から少しだけ離れた住宅地のエリアにあった。「いらっしゃいませ」 扉を開くと、白いシャ... 2023.05.06 番外編《雨月》
番外編《雨月》 四温の雨 1 「――は?」 仕事中に入っていたメッセージを開いた途端、風太は、思わず声が出てしまっていた。 隣で昼の弁当を食べている翔平が、箸を止めて視線を向けてくるのがわかる。 震えたスマホに、珠恵の弟、昌也から届いたメッセージの内容を見て、風太は小さ... 2023.05.06 番外編《雨月》
番外編《雨月》 月時雨② 珠恵とヨーデフは、教室のことを話しながら前を歩いている。 2人の少し後ろを歩きながら、風太の頭の中には、さっきのナツキという男の顔が浮かんでいた。 いかにもな目付きで風太を睨んでいたあんなガキの相手を、本気でするつもりはない。だが、腹の... 2023.01.20 番外編《雨月》
番外編《雨月》 月時雨① [月時雨(つきしぐれ) 月の夜に降る(通り過ぎる)時雨] 雨が、教室の窓をポツポツと濡らしている。 今日の天気予報は晴れのち曇りだったが、雨が降りそうだと珠恵がリュックの中に入れた折り畳み傘があるから、幸い濡れることはない。 黒板の少し上を... 2023.01.18 番外編《雨月》