本編《Feb》 第四章 居待月1 飛行機が空港に着陸すると、他に優先される座席の関係で、殆ど待たされることなくすぐに機内から出ることができた。 身体も頭も重い。早く家に帰って眠りたい。そう思いながら芙美夏が到着ロビーに出ると、出迎えの人の中に見知った顔があった。「お帰り、芙... 2022.09.19 本編《Feb》
本編《Feb》 第四章 立待月11(雨月) 気がつけば、声を上げて泣いていた。 ベッドに伏せ、手紙を胸に握り締めるようにして身体を震わせている芙美夏の頭を、永の手が何度も撫でていく。 もう、身体中の水分も空気もなくなってしまうのではないかと思う程、涙が、後から後から零れて止まらなかっ... 2022.09.12 本編《Feb》
本編《Feb》 第四章 立待月10(雨月) 『拝啓 芙美夏様』 芙美夏――と、確かに記されたその文字に、酷く動揺した。 流れるような手紙の文字は、由梨江の手によるものだった。時折乱れ、震えている箇所も見られる。初めの一文に目を通すと、芙美夏は震える唇を引き結び、目を閉じた。 気持ちを... 2022.09.12 本編《Feb》
本編《Feb》 第四章 立待月9(雨月) 「由梨江の入院中も、私はなるべく時間を見つけては病院に通った。何度も何度も妻に侘びた。今更だが、やり直したいと告げた。何度か入退院を繰り返し、由梨江がようやく落ち着いてきた頃、由梨江が子どもを身篭った。それが……美月だった。 由梨江に懐かな... 2022.09.12 本編《Feb》
本編《Feb》 第四章 立待月8(雨月) 「歴史と伝統の中には、光と闇がある。例えば香川の家などは、元を辿れば二条家の暗部を荷なう一族が祖先だ。今では表立って二条を支える地位にあるが、歴史を紐解けば、香川家はその存在さえ表舞台からは消されていたこともある。勿論ずっとずっと昔の話だ。... 2022.09.12 本編《Feb》