本編《Feb》

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第二章 二日月10

学園に着いたのは、もう午前中の授業が終わった時間だった。 エントランスで美月が車を降りる直前、淳也は最後にもう一度、さっき美月に約束させた事を念を押すように繰り返してから、帰って行った。 車が動く直前「ごめんなさい」と淳也に謝った。淳也は笑...
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第二章 二日月9

生徒会長室を足早に後にした美月は、トイレの洗面台で何度も口をゆすいでから、昼休みが終わるぎりぎりのタイミングで教室に戻った。 周りを取り囲んだ友人たちが口々に何か質問しようとしていたが、すぐに授業の開まりを知らせる音楽が流れ、名残惜しそうに...
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第二章 二日月8

シャワーブースから出て軽く髪を乾かすと、肩にタオルをかけたままベッドルームに戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。キャップを開けると、冷たい水を喉の奥へと流し込んだ。 ホテルの上層階、優に八十平米を超える広さをもつ部屋の窓から、キラ...
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第二章 簿月(過去1)

(美月と淳也) 父が二条家に彼女を連れてきたのは、淳也が小学部四年の秋のことだった。彼女は小学一年生の割には小さな女の子で、どことなく見た目が美月様に似ていた。 細い身体に大きな目、父に手を引かれた彼女は、妻と息子だと父から和美と淳也を紹介...
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第二章 二日月7

大学の駐車場に車を止めた淳也は、足早に校舎へと向かう途中で、見知った人物を見かけて駆け寄った。「青山先生」 呼ばれて立ち止まった人物は、先生と呼ばれるにはまだ若い、学生のような見た目の准教授だった。「ああ、香川君」「おはようございます。功さ...