本編《Feb》

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第二章 薄月(過去3)

ある日、学校から戻った淳也は、母を探してキッチンルームに顔を覗かせたところで、飛び出して来た功と鉢合わせた。「美月が……」 珍しく動揺した様子の功が、美月の名前を口にしたことに驚きながら、その手にあるものに目が止まる。「怪我したんですか?」...
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第二章 簿月(過去2)

(功・美月・淳也) 美月がこの家に引き取られた頃の功は、彼女をまるで存在しない者のように扱っていた。 時に見せるのは、冷たい程の無表情か、ともすれば侮蔑を含んだようにさえ見える視線で、由梨江が美月の側にいる時、ごく偶に由梨江のために会話をし...
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第二章 三日月7

再びPCに向かい、しばらく滑らかにキーボードの上で指を滑らせていた功は、最後にひとつキーを叩いた。「繋がった」 しばらくすると画面上に、馴染みのある部屋し出される。「え、これって……」 淳也は、驚きに絶句した。「あの部屋には、実はカメラが据...
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第二章 三日月6

医師の言ったとおり、あの後美月の熱はかなり上がった。薬を飲んでいるため目覚めはしないが、何度も苦しそうにうなされていた。 功はそばにいて、汗を拭いタオルを変え水分を――時には口移しで飲ませて、明りを最小限に絞った薄闇の中で、汗を酷くかいて湿...
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第二章 三日月5

翌朝淳也は、金沢藍の家のそばに車を停めていた。夕べは、一睡もできなかった。 恐らくそろそろ藍が通学のために家を出て来る時間だろうと、時計と玄関のドアを見つめていると、高等部の制服を着た女子生徒が門から出てくる。学園の制服を着た彼女が、家の中...