本編《Feb》

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第三章 小望月3

その日を最後に、功は、年末年始にさえも屋敷には戻らなかった。 マンションと会社を往復し、香川の下について、二条での仕事を把握していくための毎日を送っていた。 大学は論文を提出さえすれば、後はその評価を待つだけだ。淳也はあと一年残っているため...
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第三章 小望月2

雨模様の空を見上げる。 ――二年と少し 久しぶりに戻った日本は、生憎の空模様だった。功は、迎えの車で空港から屋敷へと向かっていた。 雨の日には未だに、濡れてボロボロに傷ついていた彼女の姿を思い出す。少しでも油断すると、簡単に入り込んでくる面...
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第三章 小望月1

《第三章》 香川美月(芙美夏) 高校3年生      二条 功        22歳      香川淳也        21歳  …………… 大学近くのコーヒーショップで、邪道だと思いながらもフローズン系の飲み物を頼む。コーヒーは未だに苦手...
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第二章 十三夜4

そう遠くない自宅まで藍を送り届けた淳也は、すぐに功のマンションへと引き返した。 駐車場に車を止めて暫くの間待っていると、下って来たエレベータが開き中から美月が出てくる。 車の外に出て、こちらへと向かい歩いてくる美月を見つめていた視線を、淳也...
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第二章 十三夜3

事態を飲み込めず茫然としたまま、功の顔から、美月はもう一度写真へと視線を落とした。震える指先で、写真に写るその人の顔の辺りにそっと触れる。人に言われなくても自分でもわかるくらい、その人と美月はよく似ていた。「どう、して……」「あの日、美月が...