本編《Feb》

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第四章 立待月2

屈み込んだ香川が、足元にこぼれ出た商品を拾い上げてエコバックに入れる間、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。 差し出されたそれを、手を伸ばして受け取ったが、何も言葉が出てこない。一度俯けてしまった顔を上げることすら出来なかった。「元気そうだ...
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第四章 立待月1

《第四章》 芙美夏(美月) 23才 二条 功    27才 香川淳也    26才 …………「先生ただいま」 子ども達の声が次々と聞こえる。「お帰り、お帰りなさい」 それに何度も答えながら、学校から帰ってきた子ども達を出迎える。園の中が、急...
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第三章 十六夜9

淳也は栞に視線を向けたが、功は康人から目を逸らさなかった。「何回聞いてみても曖昧にはぐらかすみいちゃんに、そのうち疑いが確信に変わっていきました。最初は、功さんの事もあったから、少し距離を置いてみるのもいいのかもしれないって、そんな程度に思...
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第三章 十六夜8

マンションに着くと、淳也と、そして栞とが、リビングのソファに腰を下ろし、黙ったまま向かい合っていた。 向けられた栞の表情はひどく堅い。こちらもかなり気まずいが、非は明らかに功にある。まずは昨夜の失礼を、頭を下げて詫びた。「康人がわざと誤解さ...
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第三章 十六夜7

白紙にしたいとの申し出を羽生家から受けた形で、この話はなかったことになる。 そう話す父、永の疲れた表情を見ながら、そして出て行った芙美夏を思いながら、功は自分の浅はかさは嫌というほど感じていた。「自分がどれほど愚かかは、十分わかっています。...