2022-09

本編《Feb》

第四章 居待月10

淳也との通話を終えてから、芙美夏は放心したように、しばらくの間ボンヤリとベッドに座っていた。 ふと我に返り涙を拭うと、クローゼットから毛布を取り出してドアを開ける。 功は、完全に床に眠ってしまっていた。 手にした毛布をそっと被せて、ソファに...
本編《Feb》

第四章 居待月9

「咲の様子はどう」 壁に凭れかかったまま、問うてくる大竹の顔は、疲労の色が隠せていない。「今は、よく眠っています。和田先生が付き添って下さっています」 静かな廊下に響かぬように、小さな声でそう報告した。流石に、今から大竹と話をする気分にはな...
本編《Feb》

第四章 居待月8

あれからタイミング悪く、園の中でゴタゴタが続いていた。 仕事にはもちろんプライベートを持ち込むつもりはなかったが、大竹に時間を取って欲しいと告げる間もなく、また大竹も、担当する児童の一人に起きたトラブルに対処するため奔走しており、とても話が...
本編《Feb》

第四章 居待月7

「どうでした?」 翌朝、功の顔を見るなり、開口一番に挨拶もなくそう問い掛けた淳也を一瞥する。「ちゃんと、会えたんですよね」 功の浮かべた表情に眉根を寄せ、途端に声を落として尋ねる淳也に、「ああ」と短く答える功の声は、不機嫌さを隠しきれていな...
本編《Feb》

第四章 居待月6

「芙美ちゃん、この男か?」 芙美夏に向けて問いかける大竹の声も表情も、硬く尖っている。「ずっと会ってたのか、こんな風に」「違う」 否定する芙美夏の声は、大竹には届いていない様だった。「この男と会いながら、俺と付き合うって言ったのか」「芙美夏...