本編《Feb》 第三章 満月6(弧月) 軋む体をゆっくりと起こし、隣で眠る人を起こしてしまわなかったかと、じっと見つめる。少し開いた功の唇からは、静かに繰り返す呼吸の音が聞こえていた。 そっと、その瞼にかかる髪に触れる。そのまま顔に触れようとした手を、直前で止めた。 ベッドを揺ら... 2022.08.26 本編《Feb》
番外編《雨月》 休日閑話-後日談② 少し悪戯っぽい表情を浮かべて薄く笑う風太と、ターニャの顔とを見比べてみる。けれど、全く心当たりは浮かばなかった。話してもらったことを忘れてしまったのだろうかと、少し申し訳なく思う。「まあ、多分わからねえな」「そう、なんですか?」「ちょっと風... 2022.08.26 番外編《雨月》
番外編《雨月》 休日閑話-後日談① 夏休み最後の週を迎え、図書館は宿題の自由研究の題材を求める子どもたちで連日賑わっている。 早番の仕事を終えた珠恵がロッカールームに戻り、鞄からピンクの携帯を取り出してみると、風太からのメッセージが入っていた。『駅まで迎えに行く』 いつものよ... 2022.08.26 番外編《雨月》
番外編《雨月》 第十六章・閑話(6話おまけ) 「ちょっと、ねえあれ。……またなの?」 顔を顰めたターニャの視線の先には、コーラの空き缶が転がっている。口角を気付かぬくらいほんの僅かに持ち上げた弘栄は、目線だけをターニャに向けた。それで、頷いたのだとわかる。「弘栄さんっ、お代わりまだっす... 2022.08.26 番外編《雨月》
番外編《雨月》 第7章・閑話(5話おまけ) 「ちょっと何? この酔っ払いみたいなの。弘栄、あんたまさか飲ませたんじゃないでしょうね」 「いえ、これ、だけです」 弘栄が持ち上げたコーラの缶と、カウンターに座る翔平とを見比べて、ターニャが微妙な笑みを浮かべる。「ちょっと……聞いてるん... 2022.08.26 番外編《雨月》