2022-07

本編《雨月》

第十五章 雨と飴6

服を脱ぎ捨てた風太の素肌が、目の前に晒される。逞しい身体と、射るような視線をまともに見ていられなくて目を逸らし閉じてしまうと、顎に添えられた手に強引ではない力で呼び戻された。 顔を寄せた風太の唇が、珠恵の顔を押し上げるように何度か角度を変え...
本編《Feb》

第三章 小望月2

雨模様の空を見上げる。 ――二年と少し 久しぶりに戻った日本は、生憎の空模様だった。功は、迎えの車で空港から屋敷へと向かっていた。 雨の日には未だに、濡れてボロボロに傷ついていた彼女の姿を思い出す。少しでも油断すると、簡単に入り込んでくる面...
本編《Feb》

第三章 小望月1

《第三章》 香川美月(芙美夏) 高校3年生      二条 功        22歳      香川淳也        21歳  …………… 大学近くのコーヒーショップで、邪道だと思いながらもフローズン系の飲み物を頼む。コーヒーは未だに苦手...
本編《雨月》

第十五章 雨と飴5

こんな時に何を口にしたらいいのかわからず、ただ狼狽えている珠恵の身体に、不意にゾクリとした感覚が走った。パジャマ代わりに着ていた部屋着の下に、いつのまにか潜り込んだ風太の指が少しずつ肌を上へとなぞり始めている。「っふ、うた、さ……あのっ、ま...
本編《雨月》

第十五章 雨と飴4

――可愛くて仕方ねえ 洗面台の前の鏡に、まだ惚けて赤くなった顔が映っている。心臓も収まることなくドキドキし続けていた。「……もう」 思い出すだけで、また込み上げそうになる熱を振り払うように頭を横に振って、珠恵は火照りを冷やすために冷たい水で...