本編《雨月》 第二章 雨とバタフライ4 出先から戻って来た館長への報告を済ませ、図書館を出る頃にはもう、八時を少し回る時刻になっていた。 今後も起こりうる同様の事態に備え、再発防止対策とマニュアルの徹底を図るために、早々に会議が開かれることとなった。珠恵にも、今回のことを踏まえ、... 2022.06.07 本編《雨月》
本編《雨月》 第二章 雨とバタフライ3 驚いて顔を横に向けると、ついさっきまで携帯での通話を続けていた男の子が、立ち上がり誰かに掴みかかっている。 ――え? 高校生が話していたはずの携帯を何故か手にしている森川が、彼を見下ろし苦笑いを浮かべていた。「ざけんな、返せ」「あの漢字、読... 2022.06.07 本編《雨月》
本編《雨月》 第二章 雨とバタフライ2 その週末、返却期限が過ぎていたと、問題集を夕方になって返しに来た森川に対応したのは、カウンターに入っていた珠恵だった。 顔を合わせるのは、嘘をついてしまったあの日以来だった。自分の中にある気まずさのせいでぎこちなくなる珠恵とは違い、森川の態... 2022.06.07 本編《雨月》
本編《雨月》 第二章 雨とバタフライ1 「なーんか知らない間に、福原さんって、森川さんと仲良くなってません?」 休憩が久しぶりに一緒になった真那が、大きく開いた口にデニッシュを頬張りながら、突然そんなことを言い出した。 森川の名前を聞くだけで小さく跳ねる鼓動を誤魔化すように、珠恵... 2022.06.07 本編《雨月》
本編《Feb》 第二章 上弦の月6 田邊の居ると思われる高層マンションの前に、功はハザードを灯し車を止めた。助手席の淳也が、携帯を取り出し発信すると、しばらく呼び出し音が聞こえやがて繋がった。 田邊こと高宮正巳の電話番号は、美月から入手していた。 見知らぬ番号に警戒しているの... 2022.06.07 本編《Feb》