2022-06

本編《雨月》

第六章 雨とさくら2

「学校も先生も、結局のところ俺ら親子にはあまり関わりたがらなかった。小学生のうちから何度も警察の世話んなって、中学に上がる頃にはもうすっかり札付きだ。その頃にはもう殆ど家に帰らなかったけど、だからといって警察に届けるような親でもなかったしな...
本編《雨月》

第六章 雨とさくら1

花見の当日、午前中は少し曇り気味だった空は、昼を過た頃から春の日差しが照りつける穏やかな天気へと変わっていた。 一週間前からずっと曇と傘マークのその日の天気予報を毎日チェックしては、外れて欲しいと願っていた自分の気持ちが通じたかのようで、珠...
本編《雨月》

第五章 雨とお守り3

合格した、と森川からメッセージが届いたのは、それから約一週間後のことだった。 試験の前までは毎日のように会っていた森川との繋がりは、その連絡があるまで、試験当日に送られてきた『何とか落ち着いてやれたと思う』という内容のメッセージだけだった。...
本編《雨月》

第五章 雨とお守り2

最後の勉強会は、試験の二日前。その日はちょうど珠恵の休みと重なっていたため、いつもより早い時間に森川の元を訪れた。 翔平もまだ仕事から戻っていないため、数日ぶりに二人だけの勉強の時間だった。 森川への気持ちをハッキリと自覚した今、少し早く胸...
本編《雨月》

第五章 雨とお守り1

朝からカウンター業務に就きながら、仕事に集中しなければと思うのに、珠恵は気が付けばぼんやりと昨日のことを考えてしまっていた。 この一週間はずっと、勉強の準備や復習に時間を割いていたため、寝不足が続いている。夕べもあれから家に戻って今日の準備...