2022-05

本編《Feb》

第二章 二日月5

翌朝は学校まで淳也が送ってくれるというので、それに甘えて車に乗せて貰った。夕べ殆ど眠れなかったため、助手席で揺られながら自然と目が閉じてしまう。「みい、……みい、電話なってる」 淳也の声に瞼を上げる。鞄の中から唸るようなバイブ音が聞こえてい...
本編《Feb》

第二章 二日月4

――お母さんが訪ねてきた。 本当なのだろうか。  美月は、親が居ながら施設で暮らさざるを得ない境遇の子どもではなかった。生まれてすぐに親に捨てられ、命も危うかったという事だけは、先生達の話から何となく知ってはいた。 だから、記憶のある初めの...
本編《Feb》

第二章 二日月3

淳也が卒業した今は、友人達と下校するのに不便だからと迎えの車は断りを入れ、美月は電車で下校している。 その日は放課後の当番の用事を済ませ、いつもより遅い時間に一人で駅に向かっていた。 駅までは学園から十分ほど。角を曲がり駅へと続く大通りの歩...
本編《Feb》

第二章 二日月2

「美月さあ、田邊会長と何かあった?」 実験室に移動する時、並んで歩いていた藍が口を開いた。「えっ」「さっき、食堂でちょっとおかしかったし」「ううん、何にもないよ。私あの人と話したことすらないし」「そう……ならいいけど。何かさ」「何か、なに?...
本編《Feb》

第二章 二日月1

《第二章》 香川美月(芙美夏) 高校一年生 二条 功      大学二回生 香川淳也      大学一回生 田邊正樹(高宮正巳)高校三年生 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 今年は空梅雨になるとの大方の予測は外れ、六月に入ってからは雨が降る...