本編《Feb》 第二章 二日月9 生徒会長室を足早に後にした美月は、トイレの洗面台で何度も口をゆすいでから、昼休みが終わるぎりぎりのタイミングで教室に戻った。 周りを取り囲んだ友人たちが口々に何か質問しようとしていたが、すぐに授業の開まりを知らせる音楽が流れ、名残惜しそうに... 2022.05.06 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 二日月8 シャワーブースから出て軽く髪を乾かすと、肩にタオルをかけたままベッドルームに戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。キャップを開けると、冷たい水を喉の奥へと流し込んだ。 ホテルの上層階、優に八十平米を超える広さをもつ部屋の窓から、キラ... 2022.05.06 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 簿月(過去1) (美月と淳也) 父が二条家に彼女を連れてきたのは、淳也が小学部四年の秋のことだった。彼女は小学一年生の割には小さな女の子で、どことなく見た目が美月様に似ていた。 細い身体に大きな目、父に手を引かれた彼女は、妻と息子だと父から和美と淳也を紹介... 2022.05.06 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 二日月7 大学の駐車場に車を止めた淳也は、足早に校舎へと向かう途中で、見知った人物を見かけて駆け寄った。「青山先生」 呼ばれて立ち止まった人物は、先生と呼ばれるにはまだ若い、学生のような見た目の准教授だった。「ああ、香川君」「おはようございます。功さ... 2022.05.05 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 二日月6 正巳が美月を連れて行ったのは、生徒会長室だった。先に中へ入るよう美月を促すと、続いて部屋に入り中から鍵を閉める。 美月はそれを見ながら、もう一度、硬い表情で口を開いた。「どういうつもりですか」 何も答えず笑みを浮かべたまま、正巳は革張りの生... 2022.05.05 本編《Feb》