本編《Feb》 第二章 簿月(過去2) (功・美月・淳也) 美月がこの家に引き取られた頃の功は、彼女をまるで存在しない者のように扱っていた。 時に見せるのは、冷たい程の無表情か、ともすれば侮蔑を含んだようにさえ見える視線で、由梨江が美月の側にいる時、ごく偶に由梨江のために会話をし... 2022.05.09 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 三日月7 再びPCに向かい、しばらく滑らかにキーボードの上で指を滑らせていた功は、最後にひとつキーを叩いた。「繋がった」 しばらくすると画面上に、馴染みのある部屋し出される。「え、これって……」 淳也は、驚きに絶句した。「あの部屋には、実はカメラが据... 2022.05.08 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 三日月6 医師の言ったとおり、あの後美月の熱はかなり上がった。薬を飲んでいるため目覚めはしないが、何度も苦しそうにうなされていた。 功はそばにいて、汗を拭いタオルを変え水分を――時には口移しで飲ませて、明りを最小限に絞った薄闇の中で、汗を酷くかいて湿... 2022.05.08 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 三日月5 翌朝淳也は、金沢藍の家のそばに車を停めていた。夕べは、一睡もできなかった。 恐らくそろそろ藍が通学のために家を出て来る時間だろうと、時計と玄関のドアを見つめていると、高等部の制服を着た女子生徒が門から出てくる。学園の制服を着た彼女が、家の中... 2022.05.08 本編《Feb》
本編《Feb》 第二章 三日月4 医師の到着を知らせる着信に対応し、功は、泣きはらし不安げな顔をした美月に、医者を呼んだことを告げた。 せめて診察と治療を受けて欲しいと、できるだけ落ち着いた口調で説得する。初めは抵抗した美月も、こんな時間に医師が来てくれたことへの申し訳なさ... 2022.05.08 本編《Feb》