2022-05

本編《Feb》

第二章 無月2

「ちょっと正巳。やめなさい」 さっきまでより少し硬さが取れた表情の絵美が、呆れたようにソファに腰掛ける正巳に注意する。「返して」 玄関先から踵を返した美月は、真っ直ぐにソファーに向かい正巳に向けて手を差し出した。携帯と財布を脇に置いた正巳は...
本編《Feb》

第二章 無月1

高速に入った車は、どうやら他県へと向かっているようだった。 正巳が、懐かしいところに寄るとそう言った場所。それは恐らく、二人が幼い頃に過ごしていた施設――広葉野学園だろう。 確信的に思いながらも学園が近くなるまで実感が湧かなかった美月は、や...
本編《Feb》

第二章 三日月8

功にお粥を食べさせてもらい、薬も飲ませてもらった。 薬が効いているお蔭なのか傷の傷みはあまり感じないが、身体と頭がどこか気怠くて重い。それでも、夕べより気持ちも少しずつ落ち着いてきていた。 眠るように言われたが、美月には、どうしても聞きたい...
本編《Feb》

第二章 簿月(過去4)

和美が弾かれたように、美月を見遣った。功は、ゆっくりと顔を美月へと向けた。「傷痕……あったわ。転んだ時に、落ちてたガラスで傷つけた痕が。まさか美月ちゃんあなた」「今日だけじゃないよ。みいは前にも同じように、自分の足を鉛筆で刺した事があるんだ...
本編《Feb》

第二章 薄月(過去3)

ある日、学校から戻った淳也は、母を探してキッチンルームに顔を覗かせたところで、飛び出して来た功と鉢合わせた。「美月が……」 珍しく動揺した様子の功が、美月の名前を口にしたことに驚きながら、その手にあるものに目が止まる。「怪我したんですか?」...